Saturday 20 February 2021

【連載終了のお知らせ】

筆者は既に「北海道での職業猟師」という立場を退いているため、当ブログでの連載は終了となります。

ご愛読いただきましてありがとうございました。筆者の次回作にご期待ください。

Thursday 20 February 2020

【2020年2月18-20日(火-木)】 人生の岐路に立つ標識は 在りゃせぬ [協力隊324-326日目]

エゾシカの姿は見ないが、2頭分くらいの足跡と、樹皮を剥いだ跡があった。こうして樹がやられていくと、やがて山が壊され、自然環境や生態系にまで影響が及ぶ可能性があるわけだね。長い目で見ると。
浦臼ほどシカの数が少なければ関係ないかもしれないが、既に深刻な事態になっている森林も、国内にあるのかもしれない。


水曜日。北の都、札幌へ。二日間にわたり「地域おこし協力隊 全道研修会」が行われるとのことで、参加することにしたのである。


北海道の協力隊は現在、およそ660名もおり、全国一らしい。約70市町村から120名ほどが集まった。


まず講演と事例発表は、3名が順番に発表。こういうのは基本、参考にならないんだよなあと期待していなかったけど、まあその通りだった。


その後は、小グループに分かれての意見交換会。僕は「産業」のグループに割り振られたものの、他の隊員はみんな、農業関連の業務に従事している。有害鳥獣関係の話は共有できず、また時間も短かったので各々の活動紹介が主になってしまい、課題の解決といった結果には至らず。


一日目の研修は終わり、テレビ塔に移動。


交流会だ。ここに来て、有害鳥獣関係に携わる人たちと話したり、ふつうに何人かと交流することができた。


宿泊先へ。たまに出張すると、ちょっとしたワクワク感というか、楽しさはあるよね。夜中に何度も、目が明いてしまうタイプだけど。


二日目は、テーマ別ワークショップ。僕は「仕事を通した定住・定着」のグループを事前に選択している。


「定着への道のり」をサブテーマに、協力隊になったきっかけ→現在の活動→やりたいこと→課題→解決策→ゴール、といった流れで各々、付箋を貼っていく。
悩みながら模索しながらも、それぞれ希望する分野や目標などに向けて、想いを共有しヒントを得ることができた。自分は今まさに、定住に向けて考えなければならない状況に置かれているので、非常に良い機会となったね。

こういった研修というやつは苦手だし、ワークショップとか役に立たねえよ、なんて思っていた自分を恥じよう。敬遠せず経験してみれば、新たな発見もあるものだ。
最初で最後となったであろう協力隊研修は、有意義なものに終わった。


Saturday 15 February 2020

【2020年2月10-15日(月-土)】 脂に画き、氷に鏤む [協力隊316-321日目]

今季一番の冷え込み。ひと晩で家中の水道が凍結し、うっかり置きっ放しだったマグカップの水も、完全に凍っていた。


トイレのタンク内も、ご覧の通りに製氷。恐ろしや北海道。
ストーブを火力MAXにしたり、ドライヤーで各管を温めるなどして、2,3時間かけて復旧させた。町じゅう凍結してたらしく、業者さんを呼んだお宅も30軒ほどあったとか。


かと思えば数日後には、春のような暖かさ。最高気温マイナスの日々だったのが、プラス6℃くらいまで上がるし。歩いてたら暑くなって、雪もみるみる融けていくし。


アライグマらしき足跡を、数ヶ所で見かけた。彼らは冬眠しないが、寒いと軽く冬篭りするらしい。それがポカポカしてきたから、出歩いてたのかね。


シカの足跡も稀に見るが、姿は無い。今年度中の捕獲は、ほぼ諦めている。


月に一度の、だれでも食堂。


今月のメニューは、北海道名物・ジンギスカンだ。


普段と違い、ワンプレートで。野菜・おにぎり・フルーツサラダと一緒に提供する。あと味噌汁。


そして特別企画として、パン・コーヒー・紅茶の販売も実施した。超格安。


僕は飲み物を任されることに。福井時代は非営利カフェ「より処」で、毎週やってたのだ。
「おいしくなーれーおいしくなーれー」「ありがとうーありがとうー」と囁きながら、愛情こめて淹れる。皆さんにおいしいと言っていただけたので、何より。


多くの来客で賑わっていた。町外から訪れてくれる方もいて、ありがたいことだね。写真は落ち着いた時のだから、人が少なく見えるけど。


最後にスタッフのまかないランチタイム。旨かったぜ。
ちなみに、ジンギスカンはヘルシーだとされている。その理由の一つとしては、含まれる脂の融点が高いため、人間の体内で溶けにくく即ち吸収されにくいから。だそうだ。へー、僕は体重増やしたいんだけどね。
余りを夕飯用にもいただき、たらふく羊をいただいた日となった。


来月は巻き寿司。またコーヒー担当をする予定だが、僕が手伝いに来るのは最後になるだろうか。



その4月から雇用されない件について。役場の人たちはどこまで知ってるのか分からないが、全くもって話題に出てきていない。誰が何を考えてるのか見えないから、なんか怖いよね。人狼ゲームじゃないんだからさ、人間不信に拍車がかかるぞ。
一方、町民の方々からは、心配する声を色々といただいている。気にかけてもらえるのは嬉しいことだ。

気力も湧かず何も考えたくないような一週間だったけど、肉いっぱい食ったら回復してきたかも。
諸々ぼちぼち、決めていかないとな。


Sunday 9 February 2020

【2020年2月4-7日(火-金)】 We used to be best buddies and now we're not [協力隊310-313日目]

火曜日。浦臼駐在所の横には、ケーキみたいな大きな雪山が築かれている。


浦臼町交通安全協会の皆さん・若手警察官の皆さん・役場総務課の皆さんと一緒に、その雪山を削っていく作業に参加させてもらった。


毎年、「交通安全雪だるま作り」というのが行われているとのこと。


時には汗だくに、時には寒さに凍え、時には見ているだけでウルサい指示するだけのおんちゃんにイラつきながら、スコップを振るっていく。
「佐宗くんパワフルだねー」と言ってもらえるくらいには、頑張って作業した。おまわりさんに負けてらんないぜ。


顔のパーツを取り付けたら、


横は微妙としても、


正面から見たら立派な雪だるまが完成。


のぼり&交通安全横断幕を取り付け、


完成。冬の間、浦臼町の交通安全を見守ってくれる存在となった。


そして、お母さん方がつくってくれた豚汁&おにぎりで昼食。作業後の体に沁みるね。旨かった。


そんなイベント的なものが無いときは、ひたすら雪の上を歩くお仕事。


人もシカもいない林道を一人、歩き続ける。しかしさすがに、成果も無く自分の存在意義も感じられないという日々が、ツラくなってきた。
めっちゃ良い運動にはなるんだけどね。定年退職したおじいちゃんじゃ無いんだからさ。


今週は、けっこう雪も降っていた。


木曜には、今季いちばんの冷え込み。朝はマイナス16℃、日中でもマイナス8℃という。
全国ニュースでは、お天気お姉さんが「今日の東京は6℃までしか気温が上がらず、寒いですっ…!」とか言ってたけど、いやいやいや、あったけえじゃんよ。と全北海道民が思ったことだろう。





いわゆる寒冷地仕様じゃない自家用車は、バッテリーが上がっていた。役場の車を借りて、救援する。やっぱりバッテリー変えないと、まだ何度か同じことになってしまうかな。




そして金曜日の夕方、凍える外勤から役場に戻ると、課長&主幹に、凍える会議室に呼び出された。こりゃまあ、良い話じゃないと直感するわね。単刀直入に、来年度つまり4月以降、雇用しないという通告をされた。そうか、そのパターンは想定していなかったな。

地域おこし協力隊というのは、最大3年間、地域で活動する制度だ。そしてその最大の目的は、活動終了後の定住である。で、僕のこれまでの様子を見てきて、その意思がないと判断した。とのこと。
まあ事実だ。正直ずっと違和感やモヤモヤ感はあったし、未だに浦臼の魅力をほとんど感じられないし、定住・永住したいという気持ちは微塵も無い。春夏になってシカをたくさん獲れるようになったら、また気持ちも変わってくるかなあとも考えていたのだが。
他にも、猟友会との関係が悪くなったこととか、僕の態度的な部分とか、勘案されたのだろう。事実上、クビということだ。協力隊としてのハンターは、今後も募集するみたいだしね。

4月からどうするか。福井に戻れれば一番良いんだけど、コンビニの店員やらされるのも違うしな。有害鳥獣捕獲の求人も全国に散らばってるものの、結局は協力隊とかアルバイトとかだし。そんな安い仕事じゃないでしょ。
捕獲と、何か別の仕事と、半々くらいで両立していけたら理想なのかなとは思うが。すぐにそんな道は開けんな。

ピンチをチャンスにしたいところだね。


Monday 3 February 2020

【2020年1月31日-2月3日(金-月)】 エキアカリふんわり落ちてくる夜 [協力隊306-309日目]

役場の、歳の近いメンバー3人でボウリングへ。隣隣町まで来ると、昔からのボウリング場があるのだ。一年ぶりだったかな。上は125、下は85くらいと、まあまあ悪いスコアであった。


それから居酒屋で飲んで、代行で帰る。やはり同年代だと気兼ねも少ないから、楽しいね。


2月最初の日は、札沼(さっしょう)線エキアカリ。浦臼をはじめ、周辺市町の駅でアイスキャンドルが燈される。


ゴールデンウィーク明けには廃線となってしまう同線。このエキアカリも今年が最後というわけだ。


前日準備もしていたのだが、当日も朝から、役場の方々と一緒に作業。


午後からは人数も増え、着々と準備が進む。地道に作ってくれていた氷の器は、300個くらいになったと言っていたか。倉庫から運び出し、


駅のホームや周辺に配置していく。


メインとなる雪山。ベンチも埋め込まれた。


紙ランタンは、地域の子どもからお年寄りまで、皆さんが作った。350くらいだったか。一つひとつ、雪を詰めて重しにし、並べていく。


専用のキャンドルがあるのだね。昨年はすぐ消えてしまったらしく、今年は良いやつにしたそうだ。


今度はキャンドルを一つひとつ、氷の器と紙ランタンに入れていく。人海戦術だと、サクサク進むね。


女性陣は、ふるまい用の豚汁とココアを調理してくれていた。お鍋にたくさん。


イベント開始前に、みんなでいただく。ずっと外作業で冷え切ってしまった体に、よく沁みて温まる。旨すぎ。


暗くなってきたところで、キャンドルに火を点けていく。ちなみに、いわゆる撮り鉄さんは、毎日のように沿線に何人も訪れている。


ホーム端。ありがとう札沼線。


ホーム中間。


ホーム反対の端。


メインの山。イルミネーションも付いた。


駐輪スペースは、雪かきして通路を作り、雪の小路に。


紙ランタンゾーン。


細やかな力作が、たくさんあった。


全体の中央付近。


紙ランタン側から見た、全体図。


反対側から見た、全体図。写真では微妙だけど、けっこう大勢の人が訪れていた。

そして僕は会場を回りながら、消えてしまったキャンドルに再点火する役目を担う。もちろん気温はマイナスで、風は冷たくて、めちゃくちゃ寒い。厚着してカイロを装備しても、体に応える。ときどき暖を取りながらだ。


駅舎内ではココアの無料配布が行われ、


少し離れたテントでは、豚汁が提供される。


交代要員で、ここも少し担当した。


好評に終わったら、あとは一気に片付ける。火を消して、キャンドルを回収して、紙ランタンは雪を投げて畳んで集めて、諸々の荷物を役場に運んだら終了だ。


週明けの月曜には、キャンドルの分別。使えそうなものは残し、そうでないものは廃棄。アルミ箔だけ燃えないゴミに分けるので、地味に時間がかかった。


あとはベンチを救出し、荷物の片付けなどをし、落着。

たまにこうしたイベントの手伝いをすると、気分転換になるね。シカもいないなか雪の上を歩き続ける毎日で、ちょっと沈み気味だったのだ。
あとは春まで、これといった催しは無いだろうから、まあ適度に息抜きしながらやってこう。